コラムcolumn
【銀行の人事制度とその影響】2022/10/06
銀行の転勤事情について
銀行員は転勤が多い。
一般的な在籍期間は3年前後で、支店長クラスになると平均2年程度で異動してしまう可能性もある。
また転勤時期も3月と決まっているわけではなく、6月、8月、9月、12月、2月など年に
複数回タイミングがある銀行がほとんどである。
体感としてはメガバンク、地銀の方が異動までの期間が短く、信金信組の方が長い傾向にある。
いずれにしてもせっかく築いた人間関係がリセットされてしまうので、
顧客側からすると煩わしさを感じる事もあるだろう。
なぜこれほど転勤が多いのか。
それは「銀行員と顧客の癒着を防ぐため」だと言われている。
お金を扱う以上、銀行と顧客はクリーンな関係を継続していく必要がある。
しかし、長期間接することによりお互いの取引に対する厳格さが無くなっていき、
最終的には着服や隠ぺいなどの不正行為に結び付くリスクが高くなっていく。
こういった事態を防ぐために、銀行員の異動は多いと言われている
異動発令のから実際の異動までの期間が極端に短いのも、不正を無くすためだとも言われている。
担当者の変更による影響
こういった銀行員の転勤サイクルの中で、我々は何に気を付けるべきだろうか。
まず考えるべきは担当者の変更による影響だ。
例えば、稀に存在する「エース担当者」の恩恵がそれにあたる。
銀行の審査は複数人の判断で決済されるため、
1人の担当者が審査に与える影響というのは限られる。
しかし、稀にその仕事ぶりから審査役の目に留まる「エース担当者」も存在する。
このエースが起案した案件というのは、審査を通りやすい。
これは贔屓というわけではなく、複数の案件を捌く審査役からすると、
信憑性の高い情報源かそうでないかの判断は重要だという事だ。
「顧客を正しい目で捉えられるか」のハードルを突破した担当者は強い。
稟議書の文章にも説得力が乗るのである。そしておおかたの場合、そういった人は仕事が正確で早い。
このエースが異動してしまった場合が、担当者変更により融資に大きな影響を及ぼすケースとして挙げられるだろう。
・銀行担当者をサポートしてこそ一流の債権者
先のエース担当者の話は特殊なケースであり、多くの場合担当者の変更で融資情勢に影響が出る事はない。
担当者ごとに案件を捌くスピードや正確性に違いはある。
しかし、全体の融資情勢に影響を及ぼすほどの権限を、担当者は持ち合わせていないことがほとんどである。
ただし、担当者変更により失われるものが一つある。
それは「案件に関する熱意」である。
稟議書の組み立てに関しても「会社の強み、社長の人格、経営理念を理解した担当者が作る稟議書」と、
そうでない稟議書では筆のノリも変わってくる。
つまり我々が注力すべきは「自分自身を理解してもらい、案件に熱を注入すること」なのである。
我々からすると担当者という1人の人間が変更になっただけの事だ。
しかし、行員の立場からすれば取引先複数社全ての引継ぎを行う必要がある。
(銀行にもよるが1人で50~100社と担当しているケースも多い)
当然銀行側としても引継ぎをしっかり行うのが仕事ではあるが、
2~3日という短い期間の中で全ての顧客を把握することは、
現実的ではないと言っていいだろう。
担当者変更のタイミングに全てを理解してもらう必要はないが、
新規案件を持ち込む際には自分を知ってもらう事を再度心がけてコミュニケーションを取ると良いだろう
(できれば保有物件の一覧・入居状況・経営計画などをまとめた資料を作成しておくと良い)。
また、こういった時にも過去の案件で提出した自作の申込資料は役に立つ。
担当者とすると、決算書からは見えてこない定性情報を手っ取り早く仕入れられるため、
過去案件の資料を見返すことは多々あるのである。
まとめ
銀行の判断において「人」のもたらす影響は大きい。
この「人」の変化を受け止め、対策を取ることは、意外と重要な仕事だと言える。
自身の財務を高める事はもちろん重要だが、
それ以外の努力の余地として「銀行員との関係性を高める」ことも意識しておくと良いでしょう。